曲名:かもめの舟屋
歌手:瀬口侑希
配信/発売日:2026-10-28
作詞:たきのえいじ
作曲:水森英夫
編曲:猪股義周
船の汽笛が歌になる
時が止まった港宿
私はかもめ、飛べないかもめ
どうすればこの海を越えられるの
指の先まで淋しくて
あなたを忍ぶ、かもめの舟屋
嘘をつくのが下手な人
だから女を迷わせる
私はかもめ、泣けないかもめ
泣いたら心が晴れるのに
胸もいつしかやせました
今夜もひとり、かもめの舟屋
箸の袋で折るかもめ
空を飛べない紙の鳥
私はかもめ、飛べないかもめ
心も羽根も身体ごと
命まるごと抱きしめて
寒さが沁みる、かもめの舟屋
Fune no kiteki ga uta ni naru
Toki ga tomatta minatoyado
Watashi wa kamome, tobenai kamome
Dou sureba kono umi o koerareru no
Yubi no saki made sabishikute
Anata o shinobu, kamome no funaya
Uso o tsuku no ga heta na hito
Dakara onna o mayowaseru
Watashi wa kamome, nakenai kamome
Naitara kokoro ga hareru noni
Mune mo itsushika yasemashita
Konya mo hitori, kamome no funaya
Hashi no fukuro de oru kamome
Sora o tobenai kami no tori
Watashi wa kamome, tobenai kamome
Kokoro mo hane mo karada goto
Inochi marugoto dakishimete
Samusa ga shimiru, kamome no funaya
A ship whistle turns into a song
At a harbor inn where time stands still
I am a gull, a gull that cannot fly
How can I cross this sea?
Loneliness reaches my fingertips
Thinking of you in the boathouse of gulls
You were never good at lying
That is what leaves a woman uncertain
I am a gull, a gull that cannot cry
Though tears would clear my heart
Even my heart has worn thin
Alone again tonight in the boathouse of gulls
A gull folded from a chopstick sleeve
A paper bird that cannot fly
I am a gull, a gull that cannot fly
My heart, my wings, my whole body
Hold my entire life in your arms
Cold seeps through the boathouse of gulls
船的汽笛化作一首歌
在時間停住的港邊旅宿
我是海鷗,一隻飛不起來的海鷗
究竟怎樣才能越過這片海
寂寞一直蔓延到指尖
在海鷗的舟屋裡,默默思念你
你是個不擅長說謊的人
卻也因此讓女人迷惘
我是海鷗,一隻哭不出來的海鷗
明明哭出來,心就能放晴
不知不覺,心也消瘦了
今晚仍獨自待在海鷗的舟屋
拿筷子的紙套摺成海鷗
一隻無法飛上天空的紙鳥
我是海鷗,一隻飛不起來的海鷗
連同我的心、羽翼與整個身軀
請將我的生命全部擁入懷中
寒意滲入海鷗的舟屋
歌詞の意味
汽笛が歌に変わる港には、船が出てゆく気配がある。それなのに宿の時間は止まり、語り手は海を越える方法を見つけられない。動いている外の景色と、動けない自分との隔たりが、かもめという姿に託されている。空を行くはずの鳥が飛べないのは、単に旅立つ勇気が足りないという話ではない。指先にまで及ぶ淋しさが、身体全体をその場所へ留めているのだ。舟屋は海と陸の境目にありながら、ここでは相手を思い続ける時間の中に閉じ込められた居場所として読める。遠くへ届く汽笛だけが、自分にはできない移動を繰り返しているようでもある。
相手について明かされるのは、嘘が下手だということだけだ。その不器用さがなぜ女性を迷わせたのか、具体的な事情は語られない。正直さをただ美徳として扱わず、受け止める側に残る戸惑いを描くところに、この関係の割り切れなさがある。二度目のかもめは、飛べないだけでなく泣けない。泣けば心が晴れると分かっていても、涙は思いどおりに出てくれない。胸がやせたという表現は、思いを吐き出せないまま内側が少しずつ削られた状態を伝える。別れを受け入れたとも、再会を約束されたとも断定できず、ひとりの夜だけが確かに続いている。
終盤で箸の袋を折る手元が現れると、かもめは比喩から小さな紙の形になる。身近な紙で作った鳥は、どれほど鳥らしくても自力では飛べない。それは語り手の行き場のなさを目に見えるものにしつつ、何かを作る動作で夜をしのぐ姿も浮かび上がらせる。最後の願いは、心だけを慰めてほしいというものではない。羽根も身体も命も丸ごと抱いてほしいと求めることで、傷ついた部分を切り離さず受け止めてほしいという切実さが増していく。結末に残る寒さは解消されない。だからこそ、求められた抱擁の温かさが、不在のまま強く意識される。